なぜ有名建築家の作品では不動産経営が成り立たないのか? 不動産経営とデザイン

先日、20数年ぶりに地方都市のある街に行ってきました。
不動産マーケット調査のためにです。

この街は、バブル期に、有名建築家の設計による商業ビルが何棟も建てられ、テナントにはファッションブランドが多く入居していました。
雑誌やテレビで取り上げられ、ドラマの撮影も行われるなど、それは賑やかな街でした。

20年後の現在・・・

この街にあった有名建築家の作品の何棟かは取り壊されて、新しいビルになっていました。
中には築10年にも満たないうちに建て替えられた建物もありました。

バブル崩壊後、同じことが全国で起こりました。

なぜこういうことが起こるのか?

不動産経営はあくまでも収益性を追求するもの だからです。

建築家による作品は、建物のデザイン性を重視するあまり、賃貸面積を最大に確保できないことが多く、
投資金額に対してのリターンが得られにくいのです。

賃貸面積が少なくなった分、デザインのプレミアムを乗せた賃料にしなくてはなりません。

しかし、景気が良いときには、デザインにプレミアムを支払ってくれるますが、
不景気になるとそのプレミアムを支払う余裕が借り手になくなってしまいます。

景気が悪くなると、家庭でも企業でも固定費削減を行います。
固定費でも真っ先に見直されるのは、見直し効果の大きい賃料です。
借主が最優先するのは、借主の懐具合です。

建築家の起用によりイニシャルコストが高くなると、賃料収入が下がった時のダメージは大きいのです。

不動産経営において、イニシャルコストを抑えることはとても重要です。
かと言って、建物が余っている現在の市場では、デザイン性による競合物件との差別化も必要です。

デザイン性の追求とコストとのバランスがうまく取れているかどうか、計画時に熟慮するべきポイントです。

計画段階で冷静な判断ができないと不動産経営に失敗することになります。

菊池 英司
不動産コンサルタント、FPとして主に個別相談、セミナー講師を中心に活動中。 住宅の購入サポート、住宅ローン相談を中心に、個人の所有する不動産、住宅に関するサービスを提供している。空家管理業務を2009年から開始し、早くから空家問題に取り組んでいる。

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