仲介業者が契約を急がせる理由

私は、住宅購入者へのアドバイスを行っています。ご相談内容の多くは、このまま契約してよいのだろうか、住宅ローンを支払っていけるだろうか、というものが多いです。中には、仲介業者に契約を迫られている方が契約を急かされているのですぐに相談したいというお客様もいらっしゃいます。

仲介業者への不満、不安はよくあること

私は、不動産を売却される方、購入される方からの相談を受け、取引前にいろいろとアドバイスをさせていただき、収入を得ています。
多くのお客様が持つ、不動産取引の不安、心配事についてご相談を受けているわけですが、ご相談内容で多いのが、媒介をする仲介業者、営業担当者のことが信用できないという不満、不安です。
不動産を取引しようという方を不安にさせる、その大きな原因が、営業担当者の押しの強さであり、契約を急がせることにあります。

なぜ契約を急がせるのか?

なぜ、仲介業者の担当者は、契約を急がせるのでしょうか?
それには主に3つの理由があります。

売上を早く確定させる

まず第一に、仲介業者として売上を早く確定するためです。
仲介業者の営業担当者は、営業として毎月のノルマがあるのです。
ノルマ達成のために、どうしても前のめりになってしまいます。
できれば今月の実績にしたいと常に願っています。
仲介業者は、どんなにお客様に尽くしても、契約、決済を終えるまではお金をもらえません。
途中で取引が流れた場合、1円もお金をもらえないのです。
契約を急がせるのは営業担当者なら当然の行為と言えます。

顧客の決断を促す

第二に、顧客の決断を促すためです。
多くの顧客は、迷い、決断を躊躇します。
決断を促すため、営業担当は期限を切る必要があるのです。
これは顧客の背中を押してあげることでもあります。

顧客に心変わりされないように

第三に、顧客の心変わりを恐れるあまり、早期に決着をつけたいからです。
世の中にはいろいろな方がいます。
中にはドタキャンする顧客もいるのです。
私も不動産会社の仲介営業をしていた頃に経験があります。
たとえば、こういうことがありました。
20代の若いご夫婦の中古マンション購入の媒介を依頼され、順調に話が進んでいました。
買主から早く契約したいという要望があったので、売主にお願いして契約準備を急ぎで進めていただきました。
ところが、契約の当日、買主が現れませんでした!!
あわてて電話をしてもつながりません。(この間、売主や売主側の仲介担当者を待たせています)
やっと電話がつながり、どうしたのか聞いたところ、
「親が反対しているので、やっぱり買うのをやめたい。」という返事でした。
なぜ、事前に電話をくれないのか・・・。
こちらの面目まるつぶれ、売主からはさんざん怒られてしまいました。
以後、この物件の客付けができなくなったのは言うまでもありません。
仲介業者の営業担当者は、こういう経験を過去に何回か経験しているものです。はやく契約書に印鑑を押してもらわないと安心できないのです。

顧客の立場としてどうあるべきか?

仲介業者の担当者には、お金を払う前から、物件の紹介、内覧物件の案内などいろいろと親身になって働いてもらっているので、何か悪い気がする、断りにくい、と思うのが人間の心理です。
心のどこかで、これ以上いろいろしてもらうのは気が引ける、担当の方に悪いとか、そういう思いが生じてしまいます。
大事なのは、不安や不満があるのであれば、はっきりと口に出して主張することです。そして、納得するまでは契約書に印鑑を押してはなりません。
弊社の相談者の中には、契約直後に解約したいと相談に来られる方がいますが、印鑑を押し契約が成立してから解除すると、違約解除となり違約金を支払わなければなりません。(相手が契約の履行に着手していなければ手付金を流して手付解約が可能な場合もあります)
後悔しないためにも、はっきりと、思ったことを口にして考えや要望を伝えなければなりません。
仲介業者の担当者は、お客様の本音を知りたい、はっきりと考えを言ってほしい、そう思っています。
遠慮をする必要はありません。
仲介業者の営業担当とは、顧客として、誠実に、正直に、隠し事なく話をするべきです。
間違っても契約当日にドタキャンなどしてはいけません。

菊池 英司
不動産コンサルタント、FPとして主に個別相談、セミナー講師を中心に活動中。 住宅の購入サポート、住宅ローン相談を中心に、個人の所有する不動産、住宅に関するサービスを提供している。空家管理業務を2009年から開始し、早くから空家問題に取り組んでいる。