京都市の高さ規制緩和

昨日のニュースを見ていたら、京都市が建築物の高さ規制を緩和するというニュースがありました。
京都市が高さ規制を一部で見直す理由は人口の減少にあるようです。
高さ規制を緩和し、マンションの戸数が増えるとマンションの売値も下がる、住宅を取得しやすくなるというわけです。

しかし、高さ規制を緩和し、京都市の郊外中心にマンションを増やしても人口減少は止まりません。
人口流出は止まらず、効果は限定的と考えます。
理由は2つあります。

第1の理由は、規制を緩和するタイミングが遅すぎるからです。
京都市郊外に高層のマンションを供給しても、購買層がすでに減少しているため、需要が限られます。
今後の住宅需要は急速に減少します。
住宅の一次取得層である若い世代の人口は、かつてよりも大幅に減少しているのです。

京都市が高さ規制を厳しくした2007年は、まだ団塊ジュニア世代が住宅の一次取得層でした。
人口のボリュームが大きい団塊ジュニア世代が住宅の一次取得層であった時期、子供を産み育てる時期に、規制緩和を行うべきところ、逆に高さ規制を厳しくしてマンション供給を抑制しました。
今の京都市における急速な人口減は、過去の施策による当然の結果です。

第2の理由は、京都市近郊における雇用が増えないからです。
人がそこに住む理由のうち最大のものは、働き、生活の糧を得るためです。
京都市近郊で、今後、大きな雇用は生まれるでしょうか?
大規模な雇用を生むほどの、新たな産業が育っているとは思えません。
京都市にはたくさんの大学があり、若者が学んでいますが、京都市内で就職する人の率はかなり低いと思います。
京都市内での就職先は限定的です。

観光業はあまり多くの雇用を生みません。
観光によるインバウンド頼みでは、人口は増えません。

日本の製造業が衰退した現代では、大規模な工場を誘致とかもありえません。
今の製造業はオートメーション化され、人は以前ほどいりません。
雇用を増やすのはかなりの難しく、とても大きなハードルです。

私の考える理由は以上の2つです。

京都市が選択した高さ規制の緩和は間違ってはいないと思います。
しかし、タイミングが遅い。
さらには、過去の高さ規制があまりにも厳しすぎた。
これが率直な感想です。

今の日本では、自然増にしろ社会増にしろ、人口増ばかりにこだわってもしかたありません。
人口は減ります。これは事実。
それを前提に社会を再構築していくしかありません。

菊池 英司
不動産コンサルタント、FPとして主に個別相談、セミナー講師を中心に活動中。 住宅の購入サポート、住宅ローン相談を中心に、個人の所有する不動産、住宅に関するサービスを提供している。空家管理業務を2009年から開始し、早くから空家問題に取り組んでいる。